生体反応を介してデータとクリエイティブの統合を

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生体反応を介してデータとクリエイティブの統合を

  • INSIGHT Research
  • 2019.03.07

SOOTHは、大広ほか計4社のコラボレーションによってスタートした「気持センシングラボ」(ご参考:プレスリリース)に参画しています。生体反応をセンシングして生活者の本心に迫ることを目指すこのプロジェクトをリードする大広の山口大道氏とSOOTH代表取締役の額田康利が、ニューロマーケティングに取り組む社会的意義やビジネスの可能性について語りました。

より心地よいコミュニケーションを創造するために

額田:山口さんとご一緒に、感情データを活用したマーケティングへの具体的取り組みがいよいよ始まっているところですね。欧米の多くの企業では、脳科学者を積極的に採用する動きも顕著になっていると聞きますが、一方で、マーケティング担当の方々にはそれを活用して何ができるようになるのか?本当にそういえるのか?といった疑問がまだまだあると思います。その点はまずいかがでしょうか?

山口:「気持センシングラボ」は人の「声にならない声」を、テクノロジーを活用して明らかにしていこうという取り組みです。脳波や視線、表情といった生体反応データを収集・解析し、人の深層心理を探っていくことにチャレンジしています。しかしながら、実態が見えにくいこともあり疑心暗鬼になっている方が多いのも事実です。古くから「ニューロ」という言葉が注目されましたが、当時はデバイスの精度もそう高くないこともあり、判明したファクトがマーケティングに活かせなかったという話をよく耳にします。そういったことから、当時体感した人からも本当にうまくいくの?という意見が多かった。とはいえ今の時代、どこの企業も「声にならない声」の重要性を認識し、深層心理を求めています。そこに対して、取り組まない手はないなと。

従来、広告領域におけるコミュニケーションは生活者に行動してもらうことを狙いとしていますが、アイデアの評価含め、本当に効果があったのか耳を傾けなければならない。これをアスキングベースで聞いていましたが、生活者は本音がなかなか言えないので、目指すべき心地よいコミュニケーションが達成できているかどうかが見えにくい状況にあった。それを掘っていくことに価値があると、私がSOOTHと出会う前に思っていたことです。

額田:そこは一緒です。コミュニケーションを受け取った人が本当に心地よく感じているのか?というテーマがありました。

山口:僕は、定量調査よりも定性調査が重要だと思って取り組んできました。たとえ、サンプル数が少なくても深堀りすることで見える「人の根源的な欲求」は万人に共通すると思っています。そこで発見したファクトを定量調査で問う。その際は、できるだけ、YES/NOで答えやすい状態にする。そういったことを大切にしてきました。しかしながら、毎回定性をやれないこともある。そうなってくると、定量で聞くボリュームが増えてしまうんですよね。そうなると、定量で尋ねても嘘をつける。回答をみても、日本人ははっきりとした態度をとらない傾向にあります。例えば、「非常に好き」・「非常に嫌い」といった左右に振れずに真ん中に答えが集まりやすい。そうなってくると、本音がぼやけてしまうことも往々にしてあるといえます。そういった意味でもこの取り組みには、相当意義を感じています。

額田:我々が知ろうとしていることは、根源的な人の変化です。今までに蓄積した経験、勘、フィーリングにデータサイエンスの見方が加われば、クリエイティブもより強固になるのではないかと考えます。「今までのやり方にとってかわるもの」ではなく、「統合させていく」、という感覚を山口さんがつくってくれました。

山口:既存の枠組みの範囲を超えてつながっていくこと。それこそ、クリエイティブであると思っています。足りないものは、それぞれが企業文化を超えてつながればいい。自らコストをかけて創りだすよりも、「能力を拡張する」ことこそ、もっと重要視されるべきです。御社とは、そういった部分も共創していきたいですね。

ビジネスにニューロをどう活用していくか?

額田:社会的意義、という大きな視点からは、山口さんはどう思われますか?

山口:自己表現があまり得意でない人と関わりをもつことで、可能性を広げていくことが可能なのではと考えています。例えば、小さいお子さんは自分が好きなものは感情的に出しますが、大人から見て背景、文脈が分からないためなかなか本当に言いたいことを理解してあげにくいですよね。これが子供の視線、脳波が絡まって意味が分かってくると、子供の育て方、教育といった分野までプラスに作用していくと思います。しっかりとこういうサービスを深化させて、子供たちの生活を豊かにしていくことに積極的に取り組んでいきたいですね。

額田:ぜひ色々、形にしていきましょう!
ところで、「気持センシングラボ」の目指す将来イメージは、どんなものでしょう?

山口:ここ1年は皆さんと気持ちの合意形成ができ、繋がりがものすごく強固なものになりました。次は具体的にいつまでに何をするかにコミットしなければなりません。それが例えば動画評価では、根源的な人の欲求に対して色んな組み合わせを用いて見えなかったことを見えていくようにすることを、事例として5本、いや10本位は今年作りたいと思っています。失敗という言葉もポジティブに捉えていて、成功しないとダメ、という風潮がすごくありますがそういうことではなく、失敗するからこそ分かるプロセスが次の高みに繋がっていくと思います。

人を思い至ることで、クリエイティブの価値を高めていきたい

額田:これからのクリエイティブはどうなりますか?

山口:「こうあってほしい」という観点でお話しすると、表現重視ではなく、対象となる生活者のコンテキストや状態の重要性が増していくと考えています。バイタルデータや行動データを収集・分析していくことで、生活者理解がより進み、その人の置かれている状況にマッチしたメッセージが届けば心地よいと感じてくれるようになる。そうなってくると、「違和感」や「驚く」ことを促していた広告表現=レトリックを深堀りしなくてもいいんじゃないかと思います。プロダクトやサービスをダイレクトに伝えても、快く受容してくれる未来があるんじゃないかと妄想しています。

額田:PUSHではなく、人がコンテンツインしていく形ですね。

大倉:はい、そこに関係性ができていく、何かを選びたいなと思ったときに、ポンと出てくるイメージです。もしかしたら今の広告は付きまとわれるからいやだと言われますが、ある一定のタイムラインで進んだときにむしろパーミッションが取れて、そうなるとノイズもなくなるから心地いい、という状態に近い将来はなっていると思っています。その際は、広告の概念が今とは違うものになっているかな、と。そういう風に、人が過ごしやすい形になっていけばいいなと思います。

額田:冒頭にも出ましたが、やはりデータとクリエイティブ、サイエンスとクリエイティブがどう結びつくか、それを追求するのが我々の使命だと考えています。

山口:今年はもっといい意味で追求を重ねて、世の中を震わせていきたいと思っています。

額田:私たちもです!本日はどうもありがとうございました。

プロフィール

山口大道
株式会社大広
東京アクティベーションデザインビジネスユニット
カスタマープロモーション局 デジタルプロモーショングループ
プロデューサー

複数の広告会社で営業やマーケティングセクションでの経験を積み、2015年12月より、株式会社大広に入社。前職時代に注力した、デジタル領域に関連する経験をベースにしながら、プロモーション業務に従事している。「生活者を動かすこと」をモットーとして、日々の業務に取り組んでいる。

額田康利
SOOTH株式会社 代表取締役 CEO

慶應義塾大学卒業後、みずほ銀行で21年間、法人営業、経営企画、人事、新サービスの企画開発等に従事。 2013年AOI Pro.入社後はグループ経営戦略を担当し、2017年から2018年にかけて常務執行役員として事業部門副統括、体験設計部管掌を担当。 2018年に体験設計事業に特化したグループ会社としてSOOTHを設立し、データを活用したソリューション提案を行う高付加価値ビジネスの展開に邁進している。

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